電子カルテの導入を検討されている医療機関の皆様にとって、全国や地域における普及の実態は判断材料となるのではないでしょうか。自院の状況と照らし合わせることで、導入のタイミングを考えるきっかけにもなります。本記事では、電子カルテの全体的な普及状況から都道府県別の導入率、今後の展望までを詳しく解説します。
厚生労働省が実施している調査によると、電子カルテの導入率は年々着実に上昇しています。
一般診療所における電子カルテの導入率は、2011年時点では21.2%でしたが、その後急速に普及が進み、2020年には49.9%、そして2023年には55.0%に達しました。10年余りで大きく増加したことを示しており、多くの診療所で電子化が受け入れられてきたことがわかります。一方で、まだ半数近くの診療所が紙カルテを運用しているという実態も見えてきます。
・調査期間:3年ごとの10月1日
・調査対象:調査時点で開設している全ての医療施設
・調査方法:医療施設の管理者が医療施設静態調査票に記入
・調査団体:厚生労働省
この背景には、長年紙カルテの運用に慣れ親しんだ医師やスタッフの存在、そして必ずしもITへの苦手意識が払拭できていない現状があると考えられます。一方で、近年新規で開業する医師のほとんどは電子カルテを導入する傾向にあり、世代交代と共に普及率は今後も自然に上昇していくと予測されます。また、製品自体の進化も目覚ましく、AIを活用したカルテ作成の効率化機能や診断予測機能などが搭載される一方、価格帯は低下傾向にあります。中には、医事会計システム(レセコン)と合わせて無料で提供する企業も登場しており、導入のハードルは着実に下がってきています。
一般病院における電子カルテの導入率は、診療所よりも高い水準で推移しており、2020年の57.2%から2023年には65.6%へと増加しています。
病院の場合、その特徴は病床規模によって導入率に大きな差が見られる点です。400床以上の大規模病院では、2023年時点で93.7%と、ほとんどの施設で電子カルテが導入されています。これは、多くの診療科や部門間で情報を円滑に共有し、質の高い医療を提供するために電子カルテが不可欠であることを示しています。
対照的に、200床未満の病院では導入率が59.0%に留まっており、病院全体の普及率を引き下げる一因となっています。小規模な医療機関における導入の遅れが、日本全体の電子カルテ普及における大きな課題であると分析されています。
・調査期間:3年ごとの10月1日
・調査対象:調査時点で開設している全ての医療施設
・調査方法:医療施設の管理者が医療施設静態調査票に記入
・調査団体:厚生労働省
電子カルテの普及状況は、全国一律ではなく、地域によって大きなばらつきが見られます。ここでは、診療所と病院に分けて、都道府県別の導入率を見ていきましょう。
診療所の電子カルテ導入率を都道府県別に見ると、非常に興味深い傾向が浮かび上がります。
2020年の調査で最も高い導入率を示したのは沖縄県で約60%に達しており、電子化への意識が高い地域であることがうかがえます。次いで、長野県(約57%)、東京都(約55%)と続きます。
一方で、2020年時点のデータでは、徳島県(約38%)、奈良県(約39%)、新潟県(約40%)などが低い導入率でした。最も高い沖縄県と最も低い徳島県とでは、約1.6倍の開きがあり、地域によるデジタル化への温度差が顕著に表れています。地域の普及率は、連携する他の医療機関との情報共有のしやすさにも影響するため、一つの参考指標となります。
病院の導入率は、診療所とはまた異なる様相を呈しています。
島根県、鳥取県、滋賀県では72%を超えており、高い普及率を達成しています。これらの地域では、行政や医師会が主導して地域医療連携を推進してきた背景が、高い導入率につながっている可能性も考えられます。
その一方で、青森県、山口県、高知県、佐賀県などでは導入率が40%前後となっており、こちらも地域による差が大きいことがわかります。
このように、診療所と病院とでは、それぞれ普及が進んでいる地域が異なる場合があり、各都道府県が抱える医療提供体制の課題や特性が反映されているのかもしれません。
導入が進まない医療機関がある一方で、国は医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に推進しています。これは、導入を検討する医療機関にとって大きな追い風となるでしょう。
政府は「医療DX令和ビジョン2030」を掲げ、遅くとも2030年までにおおむね全ての医療機関で、患者の医療情報を共有できる電子カルテの導入率100%を目指すという非常に高い目標を設定しました。この目標達成に向け、具体的な施策が次々と進められています。
全国の医療機関が安全に情報を共有するための基盤です。
メーカーごとに異なっていたデータの形式を「HL7 FHIR」という国際標準規格に統一し、相互運用性を確保します。
マイナンバーカードによる保険資格の確認を普及させ、医療DXの土台を固めます。
注目すべきは、以下の2つの取り組みです。
2025年度中の本格稼働を目指し、全国の医療機関や薬局が、患者の同意のもとで必要な診療情報を共有できる仕組みです。これにより、紹介状の電子化や健診結果の閲覧などが可能になり、地域医療連携が飛躍的に向上することが期待されます。
普及が遅れている200床未満の中小病院や診療所を主な対象として、国が標準規格に準拠した電子カルテを開発・提供する計画です。2025年中にはα版の導入が予定されており、これまで導入の最大の障壁であった高額なコストの削減が期待されています。
これらの国の動きは、もはや電子カルテが「導入するかしないか」を選択する時代から、「どのように導入し、活用していくか」を考える時代へと移行していることを示しています。
最後に、これまで電子カルテの普及を妨げてきた要因について整理します。これらの課題は、導入を検討する上で懸念される部分も多いかもしれません。
大きな理由として挙げられるのがコストです。高額な初期費用に加え、月々の保守費用や数年ごとの更新費用が、経営規模の小さい医療機関にとっては導入の大きな障壁となっています。
多くの医療機関では日々の診療業務に追われ、ITシステムの導入・運用を専門的に担当できる人材を確保する余裕がないのが実情です。
長年慣れ親しんだ紙カルテの運用フローを変えることへの心理的な抵抗は根強く、特にベテランのスタッフが多い職場では、変化をためらう傾向があります。
パソコン操作に不慣れなスタッフがいる場合、操作ミスによる医療過誤への懸念や、業務効率が逆に低下するのではないかという不安が導入の妨げになることもあります。
これらの課題を解決するべく、政府は「標準型電子カルテ」の開発などを通じて、特にコスト面の課題解決に乗り出しています。また、近年では直感的な操作が可能で、手厚いサポート体制を整えた電子カルテ製品も増えてきており、人材不足や操作への不安といった課題に対応しやすくなっています。これから電子カルテの導入を検討している方の参考になれば幸いです。
一般診療所・病院運営・自由診療といった各領域で重視されるポイントを踏まえ、3つのタイプに分けて整理しました。
違いが見えにくい電子カルテを“診療スタイル基準”で比較し、自院に合う方向性をつかめるようにまとめています。
診療フローがそのまま移行可能な
外来特化型カルテ
急性期から地域包括まで一気通貫
病院運営を支える“統合型HIS”
売上・リピートの向上を目指せる
LINE起点の次世代CRMカルテ